ちゃおちゃお的美術講座


最後の晩餐
 
 イエスの布教に関してはいろいろな説話があり、いろいろな解釈がなされています。

 まあ、そう言うむずかしいことは専門の本に任せておくとしてこのページでは一気に「最後の晩餐」まで話を進めます。

 イエスはユダヤ教の「改革者」でした。これも諸説あってなんとも言いきれないのですが、要は従来のユダヤ教の律法からの脱却や神への愛などを説いていたようです。

 当時律法学者の権威というのは高かったようです。律法学者らは怒ってイエスがエルサレムで説教を始めたころから、彼を亡き者にしようとチャンスを狙いつづけます。そしてついにイエスの13番目の弟子ユダの買収に成功(銀30枚で)します。

 陰謀がひそかに進む中、イエスと弟子達は全員で夕食を取っていました。そのとき、イエスが突然「この中の一人が私を裏切る。」と言い出したから、さあ大変。その場は騒然となってしまいます。これが「最後の晩餐」と呼ばれるモチーフです。
 上の絵はギルランダイオの描いたもの。サンマルコ美術館にあります。中央にキリストがいて、12人の弟子が左右にはべり、対面に新約聖書中最大級の悪役ユダが置かれています。非常に有名なレオナルドダビンチの「最後の晩餐」(ミラノ サンタ・マリア・デル・グラツィエ教会)ではユダも他の弟子に混じって、内心ギョッとしたポーズを取っています。でもそれは例外。
 大抵の最後の晩餐では、ユダは特別席にぽつんと置かれ、誰が見てもわかるように描かれているようです。「こいつがユダですよ」とね。

 「最後の晩餐」はこの予言のシーンばかりがクローズアップされますが、もうひとつとても重要な意味を持っています。ユダが出て行ってしまった後、イエスはパンを取り「これは私の体」、ワインを取り「これは私の血、人類のために流される契約の血」と言います。
 これにより後世のキリスト教のミサの形式が決定されます。現在のミサでも司教がパンやワインを手に取り、同じことを言って信者を祝福するのです。信者はパンやワインを食べることにより、間接的にキリストの肉や血を食べているという意識を持つのです。これは「聖体拝領」と呼ばれています。これを受けることで信者は神から離れず生きてゆけるのだそうです。

 ローマ時代にはこれが誤解され、「キリスト教とはミサのとき人肉を食う」という風評が広まってしまい、キリスト教徒迫害に拍車をかけたこともありました。

 さてイエスは万能で何でも予知できました。今回も危機の訪れを見事に予見します。では何故それから逃れようとしないのでしょうか。その謎は次回「キリストの磔」の項で説明します。乞うご期待!

 

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