ちゃおちゃお的美術講座


(おまけ)「黙示録考」
 キリスト教の正典の中に「ヨハネの黙示録」というものがあります。この書は世界の終わりの様子を予言したもので、オカルティックな意味で今でも人気があります。
 この書が書かれたのは1世紀頃だそうですが、それによると、間もなく世界が滅びるのだそうです。現代が21世紀にならんとしていることを考えるとこれは大はずれといっても良いのですが、様々な時代の人々が様々に解釈して自分の時代こそまさに世界の滅びの時代だと、嘆いたり、喜んだりしていたようです。
 
 そもそもこの書は、キリスト教が非公認でローマやユダヤ教徒達から迫害されまくっていたころに、「もうすぐ敵は全部滅んで我々の時代が来る」と信者達を鼓舞するために書かれたものでした。キリスト教会も自分達が天下をとってしまった後はこの書物を全面的には後押ししなかったそうです。そりゃ教会の天下の世界がもうすぐ終わるなんて人々が信じたら、具合が悪いですよね。ただ、その中の都合の良い部分は民衆を脅かしたり、引きつける道具として用いていたということです。

 美術作品の中にも黙示録をテーマにした物は実に多いです。最初の方に出てくる「死の四騎士」とか「サタンの地上支配」というようなモチーフは、注意するとそこかしこに見ることができます。

 さて黙示禄の中でも人々を魅了してやまなかったのは、「千年王国」でした。「千年王国」とはサタンとの戦争に勝利した後、神と殉教者達でこの地上を千年間平和に統治する時代が来る、と予言されていることによっています。この予言は殉教者の増加に貢献したそうです。今死んでおけばいずれ神と共に千年間地上を支配できると聞かされれば、喜んで殉教する人もいたのでしょう。
 中世からルネサンス期にかけて、日々の辛い暮しの中での民衆の「千年王国到来」に対する渇望は、現世への否定とつながり、様々な活動を引き起こしました。困ったキリスト教会は「千年王国は具体的に到来するのではなく、心の中に有る!教会が支配するこの今こそ実は千年王国なんである!」といってピンチを切りぬけます。

 とにかく、キリスト教徒は「黙示録」のおかげでいろいろ大変だったようです。まあ、ちゃおちゃおのような異教徒としては、「黙示録」というものがあって、それが中世期以降の人々の心を恐怖と希望の両方で捉えて離さなかった、美術のモチーフとしてもとても多い、という程度の理解で十分な気がします。
 

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