ちゃおちゃお的美術講座


「キリストの昇天」「マリアの昇天」
 キリストは十字架に架けられ絶命した後、3日後に復活します。その後数十日間にわたって弟子達に説教などを行い、そして天に上ります。この様子を絵にしたものが「キリストの昇天」です。
 絵の中でキリストは大抵両手を広げ、ゆっくり上昇しているように描かれています。昇天したと言っても別に霊魂だけが天国に行ったわけではありません。彼は生身の肉体のまま天に戻って行ったのです。このようなキリスト教の「肉体」へのこだわりは簡単には理解できませんが、教義上はとても大切なことのようです。キリスト教においては仏教などよりは、肉体と霊魂の関係はずっと密接なようです。ですから絵でも、どっしりとした肉体が上昇して行くように画かれています。
 絵の中では弟子達が集まって(場合によってはマリアと一緒に)天に上るキリストを見送ります。そしてキリストは天使達の中をゆっくり天に登って行くのです。このように肉体ごと天に上ってしまったので、この地上にイエスの遺骸がないのだそうです。(墓もしくは墓の跡はあります。)

 もう一つとてもよく描かれる「昇天」の絵が、「マリアの昇天」とか「聖母の被昇天」などと呼ばれるものです。これは聖母マリアが天に上る様子を画いたものです。
 マリアもイエスと同様生身のままで昇天します。ただしマリアには神通力は無いようで、自分の力だけでは天に上がれません。そこで足元を何人もの天使が持ち上げるようにして天に上って行くのです。ですからマリアの昇天のことを「被昇天」と呼ぶことが多いのです。

 生身のまま天に上れる特権はキリストとマリアだけのものでした。その他の人は地上で肉体を朽ち果てさせながら、最後の審判の時を待ちつづけなければならないのです。ご苦労さん!

 

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