ドゥオモ附属美術館・1


   

ドゥオモ内部にあったドナテッロとルカ・デッラ・ロッビアの「聖歌隊席」を復元保存するために1891年に創設されたドゥオモ附属美術館は、ドゥオモの後陣の向かいにあります。長らく改築工事が行われていましたが、2004年8月に訪問してみると、工事も終わって入館できました。

1587年に取り壊された大聖堂の古いファサードに飾られていた彫刻が並ぶ部屋。

   

これはアルノルフォ・ディ・カンビオ作の「聖母子像」。大聖堂正面入り口の中央に置かれていました。大聖堂の設計も手がけ、彫刻家・建築家として活躍した彼の晩年の作品(1296年〜1302年頃)。聖母の瞳にガラスがはめ込まれている唯一の例として有名だそうです。
 

同じく、アルノルフォ・ディ・カンビオによる「教皇ボニファティウス8世」とフィレンツェのかつての守護聖人「聖レパラータ」の像。ボニファティウス8世は、黒グエルフィ党を援助したために、白グエルフィ党の支持者だった詩人ダンテに嫌われ、『神曲』で地獄に落とされた教皇で、その棺はサン・ピエトロ大聖堂の地下クリプタで見られます。
 

同じくドナテッロ作の「福音書記者聖ヨハネ像」。首が長く、ヒゲも不自然なほど伸びているなど、プロポーションが独特なのは、大聖堂の旧ファサードの高いニッチ(壁のくぼみ)に置かれていたため、下から見上げても顔がきちんと見えるようにという工夫がなされたからです。
ミケランジェロの「モーゼ」像を先駆ける作品といえます。
 

大聖堂前にあるサン・ジョヴァンニ洗礼堂の最も有名な扉、ミケランジェロが「天国の門」と絶賛した第3扉の浮き彫りパネルのオリジナルもここに保存されています。1966年のフィレンツェ大洪水で被害を被りましたが、その後、丹念な洗浄と修復を受けました。

「天国の門」は、カリマーラ組合が、旧約聖書を主題として、1425年にロレンツォ・ギベルティに発注しました。息子ヴィットーリオやミケロッツォ・ミケロッツィ、ベノッツォ・ゴッツォーリなどの弟子と共に制作したパネルは、1452年に仕上がるまで、実に27年の月日を要しました。

上は第3扉左上の最初の場面で、「創世記」の「アダムとエヴァの物語」。人類の誕生と原罪の4つの場面が描かれています。アダムの創造と楽園追放を丸彫と高浮彫、エヴァの創造を半浮彫、原罪を浅浮彫、と空間の奥行きに応じて浮彫の高低に差をつけるという手法で表現しています。

   

2番目のパネルは、「カインとアベルの物語」です。
   
扉左側一番下、9番目の「ダヴィデの物語」のパネル。

 

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