ドゥオモ附属美術館・2


   

2階に上がる階段の踊り場には、ルカ・デッラ・ロッビアの彩釉テラコッタがあります。
 

彩色テラコッタで有名なルカ・デッラ・ロッビアは、初期の頃は大理石彫刻を手がけていました。
その代表作が1431年に大聖堂管理部から制作を依頼された「聖歌隊席」です。17世紀に撤去されるまで、大聖堂のミサ用聖具室入り口の上に据えられていました。これとドナテッロの「聖歌隊席」が、19世紀にドゥオモ附属美術館が誕生する直接のきっかけとなったのです。

1438年に完成したこの「聖歌隊席」は、10枚の独立した大理石パネルからできており、帯状装飾に刻み込まれた旧約聖書のダヴィデの『詩篇』第150章をテーマに表現しています。

 

本や巻物、楽器を持って歌う少年たちや、音楽隊と踊る子供たちの姿が生き生きと表情豊かに描かれています。
 

ルカ・デッラ・ロッビアの「聖歌隊席」の2年後に、大聖堂管理部がドナテッロに制作依頼した「聖歌隊席」です。

こちらは、豪奢なモザイク地の上に乱舞するプットたちを配置し、その前に広い間隔を置いて対を成す円柱を並べています。ルカ・デッラ・ロッビアの清新で静謐な作品とは対照的に、ドナテッロの作品に一貫して見られるドラマチックな躍動感にあふれています。

 

ドナテッロ作「マグダラのマリア」。ほぼ等身大の彩色を施した木像で、1453年〜1455年ごろ、ドナテッロの晩年の作品です。
もともとは洗礼堂に置かれていましたが、1966年の大洪水後の修復作業の後、美術館に移されました。
   

ドナテッロの「預言者ハバクク」。

フィレンツェでは「頭でっかち(カボチャ頭)」と呼ばれているこの彫刻は、1416年から1436年にかけて制作されたジォットの鐘楼の外側四面を飾る6体の彫刻のうちの一つ。
これらの彫刻は、鐘楼全体の装飾のテーマ、預言者と旧約聖書の父祖たちを表しており、現在鐘楼にあるのはいずれもコピーで、この美術館にあるものがオリジナルです。

 

ドゥオモ美術館の傑作の中の一つ、ミケランジェロの3作目の「ピエタ」。
元来は、ローマのサンタ・マリア・マッジョーレ教会のミケランジェロ自らの墓のために、1548年から1555年にかけて制作されたものといわれています。1674年ごろにローマからフィレンツェに移され、サン・ロレンツォ教会のメディチ家の墓地を経て、1981年に博物館に収納されるまで、1721年からずっと大聖堂に置かれていました。

改宗したパリサイ人のニコデモとマグダラのマリアに支えられ、聖母マリアの胸に抱かれるキリスト受難の最後のシーンは、死を前にした人間の苦しみを象徴しています。キリストの後方で頭巾をかぶったやせこけて苦しみに満ちた表情のニコデモは、年老いたミケランジェロ自身の肖像画です。

後世に手直しされたマグダラのマリアがとても不釣合いであることや、キリストの左足の欠損、左ひじと右手にも損傷が見られるなどの欠点にもかかわらず、ミケランジェロ最高傑作の一つであることは疑いようがありません。

   
このほかにも、ジォットの鐘楼の外壁を飾っていた浮彫や彫像のオリジナル、14〜15世紀のフィレンツェの金細工美術を代表する洗礼堂の「聖ヨハネの銀の祭壇」、ドゥオモの大円蓋の模型など、この美術館にはみどころがたくさんあります。
   

「ドゥオモ附属美術館・1」